ストレスについての基礎知識



ストレスとは

ストレスとは、もともと物理学で使われていた「物体の外側からかけられた圧力によって歪みが生じた状態」を表わす言葉です。

この元来、物理学の分野での概念であったストレスという言葉を生理学、医学の分野で初めて用いたのはアメリカの生理学者ウォルター・キャノン(Walter Cannon, 1871-1945)であり、その後ハンガリー系カナダ人の生理学者であるハンス・セリエ(Hans Selye, 1907-1982)により、多種のストレスに対しラットが同じように反応することが見出され、セリエはストレスを『生体に作用する外からの刺激 (ストレッサー)に対して生じる生体の非特異的反応の総称である』と定義しました。
出典:良いストレスと悪いストレス(二木 鋭雄著)

つまり、医学的には、心や身体に外部からかかる刺激をストレッサーといい、このストレッサーによって、心や身体が起こす反応をストレス反応といいます。

風船を仮に心だとすると、風船を指で押しているその指の力が「ストレッサー」であり、押されて歪んでいる風船の状態が「ストレス反応」ということになります。

人の受けるストレッサーには、暑さや寒さ、薬物など、身体が受けるものもありますが、一般に「ストレス」というときには、人間関係、仕事や家庭の悩みなど、が受けるもの(心理・社会的ストレッサー)を指します。

ストレッサーによって引き起こされるストレス反応

ストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、次の3つに分けられます。

まずは心理面でのストレス反応です。これには、活気が低下したり、イライラしたり、不安になったり、気分が落ち込んだりするなどの症状があります。

次に身体面のストレス反応です。これには、肩こりや腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢、不眠などさまざまな症状があります。

そして、最後は行動面のストレス反応です。これには仕事でのミスが多くなったり、飲酒や喫煙の量が多くなるなどがあります。

コーピングについて

これらのストレス反応が長く続く場合には、過剰なストレス状態に陥っている危険性が高いです。

コーピングとは「何らかの心理的ストレスを体験した個人が、嫌悪の程度を弱め、また問題そのものを解決するために行う様々な認知的・行動的試み」です。
出典:保育従事者のバーンアウトとストレス・コーピングについて

つまり簡単に言うと、コーピングとは、ストレスを対処する方法のことを言います。

私たちは、日ごろの生活でストレスがあると、カラオケに行ったり、趣味をしたり、体を動かしたりと様々な方法でそれを緩和しようとします。

しかし、このストレスコーピングの対処能力を上回るストレスを受けた状況が長期間続いたりすると、ストレス反応が慢性化し、元気がなくなる、イライラするなどのうつ状態が現れてきます。

このようなうつの状態が続くような場合には、このサイトに掲載されている外部の専門家(精神科、心療内科)に相談されることをおすすめします。

コーピングによるさまざまな対処方法

①ストレスの原因を取り除く、解決策を考える
ストレスの原因となっているそのもの自体を取り除いてストレスをなくし解決を図ります。

②周囲の人に聞いてもらう
ストレスによって発生した自分の不安感や怒りなどの感情を、周囲の人たちに、聞いてもらうことによってストレスを発散する方法があります。

③気晴らしをする
運動、趣味、カラオケなど、様々なストレス解消法で気晴らしをします。

睡眠の重要性

ところで、睡眠に問題がなければ、メンタルヘルスに問題はないといえるほど、実はメンタルヘルスを考えるうえで、睡眠は欠かせない要素だといわれています。

たとえば、睡眠時間が1日4時間の日が1週間続くと、ホルモン分泌の異常血糖値の上昇などが生じ、さらにそのような状態が継続すると、記憶力や処理能力にも影響するそうです。

また、睡眠不足は仕事の効率を悪化させるため、残業が増え、健康を害するという悪循環にもなっていく可能性があります。

つまり、いい眠りを取るように心掛けることがきわめて大切なのです。

それでは、いい眠りを取るには、どうしたらよいでしょうか?

①眠る準備をする
まず、就寝前の4時間は、コーヒーを飲まないなどカフェイン摂取を避けるようにした方がよいでしょう。
また、就寝前は熱すぎるお湯に入るのを避け、ぬるめの湯に入浴してリラックスすることや、読書、音楽なども眠気を誘うのに効果的です。また、就寝前の照明はやや暗めにしておきましょう。
②朝の光の利用でよい睡眠
早朝の自然光(2,500ルクス以上)には、人の体内時計をリセットする作用があるそうです。この光を浴びて、15時間くらいすると眠くなるリズムが作られます。
③規則正しい生活をする
毎日、規則正しい睡眠のリズムをつくりましょう。やはり、早寝早起きがよいです。
コーピングと睡眠の関係については、ストレスコーピングによって睡眠の改善が可能であると考えられており、実際に大学生を対象に行った研究によって、睡眠健康の改善にはコーピングが有効であることが明らかになっています。
“大学生における睡眠健康とストレスコーピングとの関連より”



ストレス関連疾患である心身症について

ストレス反応が慢性化すると、メンタルヘルスの疾患以外に身体面の疾患も現れます。これを「心身症」といいます。

たとえば、呼吸器系では「気管支喘息」、消化器系では「胃潰瘍」「十指腸渡瘍」、内分泌・代謝系では「糖尿病」、皮膚科領域では、「慢性蕁麻疹」「アトピー性皮膚炎」「円形脱毛症」などです。

これらは、すべてストレスが原因だというものではありませんし、もしかしたら運動不足や食生活が影響しているかもしれません。

しかし、労働者本人も気が付かない間に、ストレスの状況が現れ、心身症に至ることもあります。

メンタルヘルス不調とは

厚生労働省による「労働者の心の健康保持増進のための指針」によると、「精神及び行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むもの」と定義されており、精神疾患だけではなく、心身症や、社会生活や仕事上の問題など幅広く捉えた意味となっています。

こころの病気について

ここでは、メンタルヘルス不調に伴い発生する「こころの病気」について、主なものを見ておきましょう。“厚生労働省ホームページ(みんなのメンタルヘルス)より一部引用”

①うつ病
うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。

ゆううつ、不安などの状態があり、初めは倦怠感や食欲不振身体の症状から自覚されるため、本人が、心ではく、身体の病気だと考えることが多いといわれます。
特に、朝が調子が出ないようになり、朝早く目が覚めてしまい、気が重く、ゆううつで、出勤の支度に時間がかかるようになってしまいます。
仕事では、特に午前中の仕事が進まず、根気も続かなくなります。
決定や判断ができなくなり、人と話すのも嫌になります。
性格的には、好きだったことがつまらなくなる、涙もろくなることがあります。自殺に至ることもあるため、注意が必要です。
②躁うつ病
躁うつ病は、うつ状態と躁状態(そうじょうたい)の両方がみられるもので、ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態をくりかえします。

躁状態では睡眠時間が短くても活動的で、声が大きくなり、周りの人に横柄で配慮に欠ける言動・態度をとります。そして、職域でトラブルを起こすことが多くなります。
また、躁状態は、本人にとって、気分がよいものですので、本人には病気の自覚がないケースがほとんどです。
③統合失調症
統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気で、若者が発症しやすく、幻覚や妄想などがあるのが特徴です。

統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。
陽性症状の典型は、幻覚と妄想であり、幻覚では周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴症状がみられることがあります。一方、陰性症状は、意欲の低下感情表現が少なくなるなどがあります。
このような症状がいったん安定しても、コミュニケーション障害、引きこもりなどの後遺障害が残りやすく、比較的長期の休職を必要とすることが多いものです。
④アルコール依存症
アルコール依存症とは、お酒の飲む量などを自分でコントロールできなくなり、お酒を飲むことがよくないことだとわかっていても、脳に異常が起きて飲むことがやめられなくなる状態をいいます。
つまり、このような意味で、アルコールは、麻薬や覚せい剤と同様の依存性の薬物の一種だともいえます。このように毎日お酒を飲まずにいられない「精神依存」となると、アルコールが切れることによって、手が震えたり、冷汗が出たり、イライラしたりと、「身体依存」が形成されることもあります。
前日のことを思い出せないことがたびたびあるようになった場合には、注意が必要です。仕事においては、遅刻や欠勤があったり、出勤してもお酒臭いといった問題が現れます。
⑤パニック障害
パニック障害とは、突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、そのために生活に支障が出ている状態をいいます。

身体的には明らかな異常は認められませんが、発作への不安から、閉鎖された空間では「逃げられない」と感じて、電車やエレベーターに乗ったりすることなどが苦しくなります。
⑥PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSD(Post-traumatic stress disorder)とは、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるものです。

命の危険を感じたときなどの強い恐怖を経験した人に起きやすい症状です。そのときの記憶が心の傷となって、こころが不安定な状態になるなど、さまざまな症状を起こします。
過去の怖い体験と現在の症状が結びつかず、本人もPTSDだと気がつかないこともあります。
PTSDの原因は、大地震、火事、交通事故、殺人事件、幼いころに受けた虐待などがあり、実際に平成23年3月の東日本大震災の後には、被災した多くの人にPTSDの症状が出たようです。



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